ペルセウス通信

EANM’24におけるPPMX-T002研究発表採択について

2024年07月23日

みなさんこんにちは。社長の横川です。
先週末、EANM’24(欧州核医学会)でのPPMX-T002の発表の採択をお知らせしましたが、当社の開発戦略と発表内容について少しご説明いたします。

当社事業の中心は抗体医薬品の創薬ですが、抗体には①がん特異的な抗原にのみ接合する性質(集積性)と、②(一部の抗体では様々な抗体の機能で)がん細胞を死滅させる性質があります。①と②の両方を兼ね備えているのがnaked抗体薬(抗体単独、抗体そのまま)で、PPMX-T003が該当します。これに対して①の性質しかないがん特異的な抗体は、低分子の抗がん剤を結合したADCか、放射性同位体を結合したRIT等として治療薬となります。当社ではADCとしてPPMX-T004を、RITとしてPPMX-T002の開発を進めています。ADCとRITは、武装しているという意味でnaked(裸)に対してarmed抗体とも呼ばれています。

RITには、従来ベータ線を用いるのが一般的でした。アルファ線は、体内に入れて治療に用いるには強力すぎると考えられていたためです。ベータ線はエネルギーがそれほど大きくなく、細胞に当たった場合のDNA切断も、2本鎖のうち1本にとどまります。一方で、投与量は副作用が大きすぎない用量に決まるため、がん細胞を殺す力にも限界がありました。

ところが、アルファ線が持つエネルギーは大きく、DNA2本鎖を2本とも切断するため、がん細胞を一気に死滅させる力があります。以前、PPMX-T002を富士フイルム社に導出した時には、ベータ線を放出するイットリウム90を付けていました。新規開発に際し、最新の放射線技術を組み入れ、イットリウム90をアクチニウム225に変更したところ、動物実験では格段に優れた効果を確認できました。特許出願も完了したため、本学会での発表を申し込んだものです。

近年、技術が進んでアルファ線が医薬品として使用できるようになり、大手の製薬企業を巻き込んだアルファ線のRITの開発競争が激化しています。アルファ線に関する発表も次第に増える中、今回EANMでPPMX-T002の研究成果が採択されたことは、非常に名誉なことと思っています。