ペルセウス通信

第3四半期の振り返りと今後の成長戦略について

2024年02月14日

みなさんこんにちは。社長の横川です。
本日、第3四半期の決算を発表させていただきました。各パイプラインの進捗と今後の注力点についてご説明いたします。

PPMX-T003(以下T003)はPVの治験終了が遅延していますが、計画通りの導出を目指して進めています。T003は当社独自のユニークな抗体で、これを最大活用するべく適用拡大やその他の応用も検討しています。

PPMX-T002(以下T002)は、既にご説明のとおり放射線核種をアクチニウム225に変更した開発を検討しており、放射性医薬品の市場が活性化しているため、来期の導出に向けて注力しています。T002は米国でイットリウム90での治験実績もありますので、早期の導出を目指しています。

PPMX-T004(以下T004)は、今、当社ラボで最も研究開発に力を入れているパイプラインです。ペルセウス通信で何度かお伝えしていますが、ADCは抗体が持つがん特異性と、低分子抗がん剤が持つ高い細胞殺傷性という、それぞれの長所を兼ね備えた医薬品で、がん細胞にのみ強力な抗がん剤を届けてがんを死滅させる設計です。ただ、抗体と低分子の組合せですので、両方の難しさも持っています。低分子抗がん剤は毒性も強く、正常細胞へ届けられない限りは無毒ですが、血液中で結合が切れると重篤な毒性が問題になります。
また、抗体はバイオ生産(哺乳動物による無菌製造)するため、多額のコストがかかります。ADCには、低分子抗がん剤の高い治療効果、抗体が本来持つ安全性、血液中での結合維持という安定性、がん細胞内で即座に結合が切れて作用する機能性、そしてコストの全てをバランスさせるという課題があります。第一三共社のエンハーツ(乳がんなどに発現しているHer2が標的)の登場により、この課題を克服すれば、ADCはすばらしい抗がん剤になることが実証されました。今、ADCの開発に向けて大手製薬企業が提携、導入、買収に動いています。

【表:ADCに関する製薬業界の動き】

発表年月

導入会社

起源会社

内容

方法・

金額(米ドル)

2020.7

アストラゼネカ

第一三共

DS-1062 (抗TROP2)

提携・60億

2020.9

ギリアド・サイエンシズ

イミュノメディクス

Trodelvy (TROP2)

買収・210億

2023.11

アッヴィ

イミュノジェン

Elahere (抗葉酸受容体α抗体薬)等

買収・101億

2023.3

ファイザー

シージェン

パドセブ、アドセトリス

買収・430億

2023.10

メルク

第一三共

抗Her3、抗B7-H3、抗CDH6の3剤

提携・220億

2024.1

J&J

アンブレックス・バイオファーマ

ARX517 (PSMA)

買収・20億


当社は以前からPPMX-T004というADCの開発を進めています。昨年2月16日付のペルセウス通信でも業界情報と共にご紹介しましたが、当社でも有望な抗体-低分子抗がん剤/リンカーの組み合わせが見つかっており、動物実験で良好な薬効試験結果を得るなど、きわめて順調に進捗しております。現在、サルでの毒性予備試験を準備中ですが、試験の終了とともに、いよいよ本格的に開発体制を整えます。準GMP製造品を用いたGLP毒性試験を経て、治験に向けた準備を進めます。当社はこれから、次の成長戦略の柱としてT004の開発に注力してまいります。
皆様におかれましては引き続き当社へのご理解・ご支援のほど、よろしくお願いいたします。