ペルセウス通信

スーパー中和抗体「UT28K」の開発について

2023年08月29日

みなさんこんにちは。社長の横川です。
本日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬としてのスーパー中和抗体UT28Kの開発を中止することをお知らせしました。

UT28Kは、COVID-19から回復した複数の患者さんの抗体の研究から、富山大学の研究チームによって見出された中和抗体です。この抗体は、ウイルスの中の、感染を引き起こす重要な結合部位に強く結合して、感染を抑える働きを持っており、もし、この結合部位で抗体が結合できなくなるような変異が起こると、ウイルス自体が感染力を失って感染が起きなくなる、という解析結果が出ていました。

しかし、その後流行したオミクロン株BA.5等は、この解析結果に反して上記の結合部位が変異すると同時に、別の複数の部位が変異して感染性を獲得していたのです。これらの変異株に対しては、UT28Kの中和活性は減弱していました。このため、同研究グループではUT28Kをさらに改良し、将来的な変異株に対しても有効な抗体の探索を進めていましたが、そうした性質を一つの抗体に持たせることは困難と判断されました。当社は、これを受けて富山大学および富山県の関係者と協議し、UT28Kの開発を中止いたしました。

皆様の期待に沿えなかったことは本当に残念です。しかし、富山大学の迅速な抗体作出技術は、今後新たな感染症が発生した際等に貢献するものと考えております。当社としましても、既存薬で対処できない新興感染症に対する抗体医薬品開発にはぜひ取り組んでまいりたいと考えております。

皆様におかれましては、引き続き当社へのご理解・ご支援を賜りますようお願い申し上げます。